フラミンガム研究が開始されるそれ以前から、心筋梗塞発症者には、コレステロールが高いこと、高血圧、喫煙習慣が多いこと等、経験的に知られていました。
しかしながら、これら諸因子と心筋梗塞発症の関係は科学的には証明されておらず、本当にこれらが悪さをしているのかどうかについては、当時はまだ推測の域を出なかったのです(今日では生命保険会社のテレビコマーシャルにも登場するほど、一般に知れ渡っていることですが・・・)。
そこでフラミンガム研究の開始にあたっては、いくつかの仮説が想定されました。(恐らく)動脈硬化を促進し心筋梗塞の頻度が上昇する因子として、高血圧、高コレステロール、たばこ、年齢(加齢)、男性であること、飲酒、肥満、運動不足、糖尿病、痛風などがリストアップされ、これらの要因(後に危険因子と呼ばれるようになるもの)と心筋梗塞発症の関係が、時間軸として前向きに追跡調査されはじめたのです。初期の解析で明らかになったことは、高コレステロール、高血圧、肥満、喫煙が心筋梗塞発症のリスクを高めるということでした。その後の解析でも次々と仮説が証明され、今日いうところの“危険因子”という考え方が確立さるに到ったのです。
またコレステロールに関して、フラミンガム研究とは別に、脂質を研究する学者達の間で動脈硬化との関連が検討されていました。コレステロールは一般には全体量(これを総コレステロールといいます)が測定されますが、超遠心分離法という特殊な方法を用いることで、さらにその内訳を調べることが出来ます。その中でも比較的比重の軽いLDLコレステロールが動脈壁の内膜に沈着し動脈硬化の元凶になることが明らかにされました。これを受けてある時期からフラミンガム研究でもLDLコレステロールについての検討が開始され、1980年代になって、LDLコレステロールの方が、総コレステロールよりも強い危険因子として作用すると事実が発表されたのです。これと同時に比重の高いHDLコレステロールは、逆に動脈硬化に対し予防的に働くということも判明し、総コレステロールだけの議論では実は不十分で、動脈硬化との関係を知るにはその内訳(すなわちLDLコレステロールやHDLコレステロール)を検討すべきであるという認識が固まりました。
経歴 1987年 慶應義塾大学医学部卒 同内科、老年科を経て1995年より現職 生活習慣病や動脈硬化危険因子に対する運動療法が専門。