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ドクターコラム
スポーツプレックス提携のドクターが、お届けする、医療面からのコラムです。
心臓振盪について(1)

脳振盪ということばは一般に広く知られていますが、“心臓振盪”はちょっと耳慣れない言葉かもしれません。
前胸部に機械的な打撃(ボールがあたるなど)が加えられた場合、外傷がなくても心臓自体に機能的異常が発生し、重症不整脈や心停止を起こして突然死に到る病態が“心臓振盪”です。

発症機序の上からもスポーツの現場で起こる可能性が高く、健常成人や青少年が運動中に突然死に到るため社会的インパクトは大変大きいものがあります。新聞紙上にも取り挙げられたことがあり、記憶に新しい方もおいでになるでしょう。
欧米ではこの病態に関する報告はかなり古くからあり、例えば、1870年代にイタリアの医師が、投石が胸に当った衝撃で死亡した症例を報告しています。

一方、わが国では1990年代になって報告例が散見されるようになりましたが、これは疾患概念の普及が遅れていたことに起因するもので、実際には多くの症例が見落とされていたものと想像します。
典型的な症例としては、野球中に球が前胸部に当り、その直後に意識を消失して倒れ込むというパターンです。ピッチャーライナーが投手の胸に当るケースの他、投球が打者の胸に当る、ゴロがバウンドして胸に当るなどでも心臓振盪が発生しています。また、喧嘩、空手などにおいて拳で胸を殴られた、相手の肘や肩、頭が胸に当った、ゴールポストに胸が当ったなどのケースでも心臓振盪が報告されており、必ずしも強い衝撃だけで起こるとは限りません。ドッジボールやサッカーボールでの報告はなく、硬いものが比較的限局した部位に当るような衝撃が誘因となる様です。
子供に多く発生するというのも心臓振盪の特徴で、子供の胸郭はその形成がまだ発達途上で軟らかい、つまり心臓に衝撃が伝達されやすいことに関連があるといわれています。

海外の報告によれば、35歳以下の年齢におけるスポーツ活動中の突然死のうち、約20%はこの心臓振盪が原因であろうといわれ、青少年スポーツの現場では是非知っておかなくてはいけない病態といえましょう。

次回は心臓振盪が起こるメカニズムについて紹介します。

石田浩之(いしだひろゆき) 慶應義塾大学病院 スポーツクリニック助手 医学博士

日本臨床スポーツ医学会評議員
日本肥満学会会員
米国スポーツ医学会会員
欧州スポーツ医学会会員

経歴  
1987年 慶應義塾大学医学部卒 
同内科、老年科を経て1995年より現職 
生活習慣病や動脈硬化危険因子に対する運動療法が専門。

 
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