今回から高血圧症と運動の関係についての話題を連載します。 現在、我が国の外来診療において、医療費の第一を占める疾患が高血圧です。それだけ多くの人が高血圧と診断され、治療を受けているという証拠でしょう。高 血圧への対策として、生活習慣の点からは塩分制限と定期的運動が重要といわれます。また、ある種の食品やサプリメントを摂ることで血圧が下がる!という宣 伝広告やテレビの健康番組も最近よく目にします。 しかし医学的立場からみれば、血圧の治療はそれほど簡単なものではありません。 高血圧は世界的にも最も多い内科疾患のひとつですが、数が多いということは、その成因も様々であるということの裏返しです。つまり、原因と病気が単純に1 対1対応しておらず、同じように血圧が高くなっていてもその原因は人により千差万別なのです。したがって、生活習慣の改善で血圧を下げようと試みる場合、 あるひとつの要因を改善すれば誰でも血圧が下がるかというとそんなことはあり得ず、人により反応性はバラバラなため、各人にあった方法を試行錯誤で探して ゆくしかありません。 どこかのテレビ番組でやっていたように、ある食品を食べれば誰でも血圧が下がるようなことは本来あり得ないのです。
さて、以上のようなことを基礎知識とした上で運動と高血圧の関係について、最近の知見を御紹介してゆきましょう。 現在、高血圧で薬を飲まれている方も多いと思いますが、御存じのように血圧の薬は生涯飲み続けることが原則です。それゆえ、服薬を開始することに抵抗を示 す患者さんも少なくありません。できるならば薬を飲まずに血圧を下げたいーそういう思いは多く方がお持ちのことでしょう。非薬物療法で、現在、その効果が 科学的に証明されている代表的方法は食事療法(減塩)と運動です。 単回の運動で血圧が下がることを初めて報告したのはフィッツジェラルドという学者です。もともと高血圧でスポーツ愛好家だった彼は、自分がジョギングをしたあと、血圧が4〜10時間にわたって低くなることを発見、1981年に英国の医学雑誌に発表しました。 以降、血圧と運動に関しては様々な研究が行われ、運動が血圧の治療に有効であることが確認されたのです。
今後数回にわたって血圧を下げるための運動のポイントをこのコラムで解説してゆきます。
経歴 1987年 慶應義塾大学医学部卒 同内科、老年科を経て1995年より現職 生活習慣病や動脈硬化危険因子に対する運動療法が専門。